マッスルナット バージョンアップ秘話

ユーザーの様々なニーズを満たす脱落防止ナット「マッスルナット」が出来るまで。

ご好評頂いている当社の脱落防止ナット「マッスルナット」。この製品が販売に至るまでの開発経緯をご紹介します。

商品開発のきっかけ

開発前のとある展示会のアンケートにおいて、「緩まないナットが欲しい」というアンケートの結果が1番にあがりました。そのために、緩まないナットを作ろうと目標を定め、当社のこれからの生き残りはオリジナル商品を持つ事という方針のもと商品開発に掛かりました。

第1号の商品試作

ishikawa_photo.jpgその後、スプリングを使った緩み止めナットの商品試作が出来上がり、ユーザーに持参しました。ユーザーの前で披露し実際にはめて緩まないことを実感して頂き、これで完成とばかり内心は思ったのですが、ユーザーから「外してほしい」との要望があがりました。当社は、「外す事が出来るのは緩むと同じ事」なので、このナットは外せないと説明をしました。その理屈は納得して頂けましたが、メンテナンスも必要な時があるのでということで外す事となりました。結果は、ボルトが引きちぎれ、新しいナットも入らなくなってしまいました。

「緩まない」「外したい」という相反するニーズ

ユーザーは、緩まないのは必要なことであるが、外せるようにも工夫をして欲しいという相反するニーズを依頼してきました。そこで当社は、適正なトルクで締め付けても外れず、それ以上の緩めトルクを出した時は外す事が出来るように改善しました。その締め付けトルクは、JQAにおけるNASA規格の振動試験でも緩まない強力なものでした。

同時に改善をしたのが、ある程度の緩めトルクを出せば緩めることが出来るが、ボルトを傷付けないでナットを緩めることが出来るというところでした。そのために機械に固定されたボルトなど、ボルトを交換出来ないボルトに対して使用できる強力なナットとなったのです。

この解決策は、マッスルナットを緩める時に、ボルトに絡みついたコイルの伸びによって、伸びたコイルが壁に当たることによってコイル全体が膨らむようになりナットが抜けるという仕掛けです。そのために、コイルのお尻の部分に壁を作り、伸びると当たる仕掛けをナットの中に作りました。このことから、マッスルナットの製造過程には作業工程が増えました。

さらなる改善「電動工具が使用できるように」

以前のマッスルナットは、ボルトがナットから出てきた時に、いつスプリングコイルに食いつくかわからなかったので1ピッチ分をフリーとしていました。あるユーザーから、「職人は電動工具で締付けるので、電動工具が使用出来るようにして欲しい」という依頼があり、確かに手締めは可能であったが、電動工具を使用するとスプリングコイルに噛み合わずコイルごと上に持っていかれるケースが多々出てきた。

そこでまた改善を考えました。ナットは通常汎用品であるために、冷間圧造機と自動タッパーで大量生産をしてしまう商品です。そのためにナットのネジの切り口など一定はしておらず、同じところからねじを切ることなど到底無理な話でした。そこで逆にナットの切り始めを見つけることを考え、ゲージを製作してコイルの置く場所を決めます。そうすることによってナットのピッチの延長線上にコイルを置く事が可能となったのです。完成後ユーザーで電動工具による試験を受けたが、全て電動工具で締め付けが可能となりました。

良いナットになりましたが、ゲージ合わせなど更に製造過程における作業工程が増えたのは事実です。

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